「どぶろく」と「にごり酒」、見た目は全く同じように見えますが、明確な違いがあるんです。
意外とその違いを知らず混同されている方も多いので、どう違うのか?押さえていきましょう。
「どぶろく」と「にごり酒」は、酒税法で明確な線引きがある
米こうじに、蒸した米、水と酵母を加えて醗酵(はっこう)させると、醪(もろみ)と呼ばれる米の粒が残り白濁した液体ができます。
この醪のままの状態がいわゆる「どぶろく」になり、日本酒の原点でもあります。
この醪を搾る(こす)と、原酒と酒粕に分かれます。
搾る(こす)際には、網や布が用いられますが、網目や布目の粗さの区分は別として、この搾る作業を専門用語で「上槽(じょうそう)」と言います。
この上槽を行った酒(原酒)を「にごり酒」と呼ぶことができ、酒税法上は清酒になります。
つまりは、搾るか、搾らないか(こすか、こさないか)が、どぶろくと、にごり酒(清酒)の分かれ目となります。
例えば、表のラベルで「どぶろく」と書いてあっても、裏側のラベルに「清酒」と書かれていれば、厳密に言うとそのお酒は「にごり酒」になります。
にごり酒でも、米の粒が多く残るタイプがあります。
これは目の粗い網または布で搾ったお酒で、どぶろくの風味をより残した味わいになります。
では、なぜ「搾る(こす)」作業を行うのでしょうか?
搾る(こす)作業の意味とは?
醪は醗酵により誕生します。
その醪の中には酵母が活きた状態で存在します。
この酵母の活動は次第に収束しますが、醪が出来上った時点ではまだ活性化しており、
そのままの状態ですと、酒質が悪くなったりする可能性が高まります。
それを防ぐために搾る(こす)作業が行われるのです。
ただ、搾った直後の原酒(生原酒)にも、もちろん酵母が活きた状態で存在しているので、長期保管には不向きです。
そのため、日本酒造りでは必要に応じて、おり引きやろ過、火入れ(熱処理)といった作業をその後の行程で行います。
自家醸造は良いの?ダメなの?
これまでの話でいくと、一般の方も材料さえ揃えばどぶろく造りが出来そうな気がしますよね。
米と水があれば、自然界に存在する酵母でも醗酵は可能です。(出来上る酒の味は別として)
そこで、自分でもどぶろく造りをしてみたい!と思う方がいらっしゃると思うので、ここでしっかりと言います。
どぶろくをご家庭などで造ると酒税法違反になり、罰せられる可能性があります!
自分用だから良い、人にあげなければ大丈夫という声を聞いたこともありますが、
どちらもダメ、どぶろくの醸造免許が無い状態でどぶろく造り行うのは禁じられていますので、ご注意を。
免許が無いのに酒造りをするのは御法度なのです
どぶろく造りは一部で許可されている
どぶろくは密造酒の代名詞のように言われますが、実は古来より神事と密接な関係にありました。
岐阜県の飛騨にある白川郷にある神社では、どぶろくを用いた神事が行われ、例外的に醸造が認められているそうです。
そして同地域では、毎年秋にどぶろく祭が行われ、五穀豊穣などを祈願した後、神が宿るお酒として振る舞われるそうです。
また、近年では「どぶろく特区」と呼ばれる特定の地域で、小規模な醸造を経て飲用や販売を許可されるようにもなり、
地域振興の一つの魅力としてどぶろくが提供されております。
まさか!酒店の実店舗がある新潟県上越市にもそのどぶろく特区があり、
地域の方々に田舎の酒として愛されております。
生まれたての酒らしく、荒々しさと素朴さを兼ねそなえた味わいで、最初は抵抗があっても、次第にそのうまさにハマる方が多いです。
ただ、アルコール度数も高めなので、飲み過ぎると翌日に支障をきたすのでご注意ください。
火入れという熱処理を行わない生のどぶろくは、酵母が多く残る状態であるため製造から1ヶ月程度で飲んだ方が良く、
火入れを行った商品であれば、冷蔵で1年くらいは十分持ちます。
どぶろくもお酒のジャンルの一つとして楽しんで頂けたらと思います。