生酛造りに挑戦中の千代の光酒造さんに伺いました

生酛造りに挑戦中の千代の光酒造さんに伺いました

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2023年2月3日節分
新潟県妙高市にある千代の光酒造さんにお邪魔しました。
つい先日までの雪が落ち着いた日だったのですが、豪雪地帯でもある千代の光酒造さん周辺はやっぱり雪が多いなと。
着いた早々写真を撮っていたら、池田社長からお出迎えを頂きました。
1月下旬の寒波で大雪になったときは、2メートルを超える積雪になったそうです。
今は気温も上がったので積雪量が落ちてきているそうですが、でもやっぱり当店のある地域より結構多いなという印象です。
千代の光酒造の外観 雪と空の青がきれい
さて、蔵元に着いた早々、社長がちょっと来てということで
今期設備投資した洗米(酒米を洗う)を行う場所に案内して頂きました。
千代の光酒造で新しく設備投資した洗米機
これが洗米をする設備なのですが、私もはじめて見た機械です。
一般的にあるような水流の力だけで無く、手でお米を研ぐような感じ圧力をかけてお米を洗うことが出来る設備なのだそうです。
洗米と同時に、吸水が始まり水分がお米に入り始めます。
ここは酒造りでも結構重要な部分です。
千代の光酒造では様々な酒米を使う
千代の光酒造さんでは様々な酒米を使用しますが、
今期から精米の委託先を一部替えているお話を聞きました。
精米機の性能が向上し、精米の際に出る熱量を抑えることが出来る機械とのこと。
そのおかげで精米時間の短縮により、お米の水分が飛びにくく、割れにくいに繋がるそうです。
割れにくい酒米は、この先の醸造行程でメリットがあるのです。
続いて、社長の跡取り息子でもある池田剣一郎常務にバトンタッチして、今日伺った一番の目的である「生酛(きもと)造り」の酒母を見せて頂きました。
最初に仕込んだ生酛造りの酒母は、およそ1ヶ月をかけて、本仕込みに進める段階まで来ました。
日本酒は酒母といわれる、まずは小さく仕込みをします。
その後、酒母を大きく仕込む本仕込みへと繋ぐ、大事な最初の行程です。
生酛造りの酒母タンク
醗酵中の生酛造りの醪(もろみ)・酒母
当店では速醸という現代の手法で造られたお酒を多く取り扱っていますので、実は生酛造りには興味津々なのです。
私が2020年に取得したJ.S.A SAKE DIPLOMA(さけでぃぷろま)の試験勉強中に一生懸命覚えた昔ながらの酒造りの手法で、
教本で勉強したことが目の前の生酛造りの酒母を見ることで、より理解が深まってきた感じがします。
続いて酒母を管理する場所へ。
千代の光酒造の酒母室
仕込みが始まったばかりの生酛造りの酒母
こちらは生酛造りが始まったばかりの酒母。
まだ清酒酵母がまだ活動を始めていない、乳酸菌の数を増やす「乳酸菌がんばれ!」の状態です。
生酛造りでは乳酸菌の力を借りて、清酒酵母が醗酵しやすい環境作りを行います。
この容器の中にある酒米と水だけの世界に、これから清酒酵母が醗酵を始めるのですから改めて考えるとすごいなと思います。
ただ、その醗酵を始めるまでがなかなか手間のかかる作業。
毎日温度を含めた分析をしながら、清酒酵母たち「ポコポコ」と醗酵し、勢力を増してくるまで見守ります。
酒母の温度を管理する池田剣一郎常務
こちらは酒母の温度を測っている風景。
酒造りでは温度管理がものすごく重要です。
冬場に「寒造り」が行われるのは温度管理がしやすい時期でもあるからです。
こちらの動画は、生酛造りとは対極的な「速醸造り」を行った酒母に櫂入れ(かいいれ)作業です。
清酒酵母が勢いを増してくると、このように泡立つ風景が見られます。
定期的に櫂入れという撹拌作業を行い、醗酵が均一になるようにしていきます。
そうそう、一般的に生酛造りの酒と、速醸造りの酒は、味わいに大きな違いを感じて頂けると思います。
例えるなら。。。
速醸造りのお酒の味わいは、コーラスが美しい女声合唱団のイメージ
現在の主流である「速醸造り」で造られたお酒の味わいは、女性の透明感ある歌声とハーモニーが美しい合唱のような感じでしょうか。
酵母が生み出す香りは華やか、味わいはスッキリかろやかな感じがします。
生酛造りのお酒の味わいはロックバンドのイメージ
対して、「生酛造り」のお酒の味わいは、ボーカルやギター、ベースやドラムといった個性あるメンバーで構成されるバンドが生み出す音楽のような感じでしょうか。
音のインパクトと、絶妙な音の重なり、セッションを楽しむそのようなイメージです。
香りは乳酸菌由来のヨーグルトやカルピスのようなさわやかさ、味わいは重奏感(味の重なり)と、歯切れの良いようなキレを後味に感じます。
と、速醸と生酛の違い…伝わりますか?
あくまで香りや味わいの私が持つ独断イメージを例えてみたのですが、どちらも音楽のジャンルとして楽しみ方はあるように、
速醸造り、生酛造りはそれぞれ特徴があって、ジャンルとして楽しめるのが良いと思うのです。
笑顔の店主・宮崎文徳(左側)と千代の光酒造・池田剣一郎常務(右側)
訪問の最後に酒母室にて私と池田剣一郎常務と記念撮影してみました。
二人で自撮りしていたら何だか笑ってしまいました。
そのおかげでマスク越しですが良い笑顔で撮れました。
高度なテクニックを要する酒造りの現場ですが、試行錯誤しながら楽しく酒造りに取り組んでいる池田常務のお話が大変印象的でした。
ちなみに、昨年初めて挑戦した生酛造りのお酒は現在販売中です。
千代の光 Challenge01 天然乳酸菌仕込み(生酛仕込み)
こちらは清酒酵母添加を行ったタイプになりますが、今期仕込んでいるのはその酵母添加を行っていないタイプに挑戦中です。
蔵に棲み着いた清酒酵母を醗酵させるという、難易度がもう1段階上の手法で挑戦中です。⇒【追記】2023年7月25日より「kurap3 生酛・蔵付き酵母仕込み」として発売します。
千代の光 kurap3 生酛・蔵付き酵母仕込み
千代の光 kurap3 生酛・蔵付き酵母仕込み
今回は、1時間ほどと少し短めの訪問でしたが(酒造りが忙しい時期ですので)いろいろとお話を聞くことが出来て良かったです。
皆さんが美味しいと思って頂けるお酒をお手元に届けるために、蔵元と酒小売店はこれからも連携をしていきます。
やっぱり酒造りの現場は大事だなと思いました。
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